3月18日は板橋cityマラソンに参加。これまでハーフは3回経験しているもののフルは初体験。タイムは手元時計で5時間7分であった。2月の神奈川マラソンでのハーフの記録が2時間3分。
お世話になっているパーソナルトレーナーの石橋先生によれば、この年齢ぐらはハーフで2時間以内、フルで5時間以内が目安ということであるが、ハーフ、フルとも少しオーバー。「あと少しだ、もっとがんばれ」という神の叱咤激励とも思うが、どうにも座り心地の落ち着かない気分ではある。
フルについては、その過酷さをさんざん聞かされてきた。
「足を切って捨てたくなった」「35キロからはパタリと足がとまって動けない」「なんでエントリーしたのかと思っちゃう」「フルはともかく痛みとの闘い」などなど。
初めてハーフを走ったあとは、「私はこれで十分。フルには行かない」という気分であった。それがなぜフルを目指したのか。
ひとつには、チャンスが身近にあるのだから、人生1回ぐらいマラソンを走ってもいいだろうという思い出づくり。生きているうちに1回は富士山頂でご来光を拝んでみたいというわけだ。生きているうち、元気なうちにすませておきたいことが気になる年齢になっている。
いまひとつは、トライアスロンのロングに挑戦するには、フルマラソンを走れなくてはならないということ。いやいや、なにもロングに挑戦しようという気持ちはいまはまったくない。ただし、成り行きででやっていくうちに、いつしか参加のスタートラインに立つこともあるかもしれない、といった思いはあり、ATA南行徳の仲間も多く参加することもあり、背中をおされる気分で参加をしてみた。
話は横にそれるが、先般亡くなった立川談志は色紙を頼まれると「人生成り行き」と書いたという。『人生、成り行き―談志一代記― 』 という本も出ている。
これはいつぐらいからのことか、目標を明確に設定することの重要性があちこちで指摘されている。目標も短期・中期・長期と分け、しかも紙に書き出すことが大切。ATAのレッスン(座学)でもそのプログラムがあった。
特に競技スポーツなどでは、そうした自己管理は絶対に必要なものと思うが、人生の心構えとして肝に銘ずるかといえば、私はちょっと違うタイプの人間なのだ。前を向き、明日に向かって顔をあげ、確実に足を踏みしめていく感覚がどうにもなじめない。身につかない。
生きていくとは分けもわからぬ明日に背を向けて、これまで歩んできた過去と足元をを眺めつつ、おずおずと後ずさりをしていくものというのが私の感覚である。時折そんな私の肩をたたくものがあり、私は明日に向けて振り返る。明日からの風が頬をなでる。それを人は希望という。人生成り行き、行き当たりバッタリ。この年齢になり、もう少し計画的に生きてきたならば、と思いいたることは多々あるが、これが私なので仕方がない。
よってマラソン参加も成り行きであれば、レースも成り行きで、タイムも成り行き。まあ、まずは走り出して自分の様子を確かめ、なによりもリズムを意識して行けるところまで行ってみようというわけだ。
それで行ってみると、1キロ6分30秒のペースになじんで、10キロで1時間4分、20キロで2時間9分、折り返しで2時間17分だからペースは安定していたわけだ。折り返しでは、正直うまくいけば5時間を切れるのではと思った。
でも30キロで3時間25分ということは、10キロペースで10分の遅れ。20キロまでは給水も行わずに走りきったので、30キロまではマメにエイドステーションで立ち止まり、補給のうえ軽くストレッチをしていたから、その分もあったかと思うが、1キロ7分をこえるペースとなり、40キロでおそらく4時間50分ぐらいとなると、最後の10キロは1時間25分、1キロ8分強のペースにまで落ちた。最後は早歩きの人にも抜かれたものね。
肝心の痛みだが、走る前に気になっていたつま先の痛みは、幸いにも今回は発生しなかった。これが何よりも嬉しい。30キロを過ぎると太股の前、次に股関節と痛みが発生し、35キロを過ぎると脛の痙攣が始まり、一足ごとにぴくぴく。そのうえ、このところ調子のよろしくない痔がでるのではないかとびくびくしながら、肛門に力を入れる。
でも、耐え難いほどの痛みはなかった。神奈川マラソンのハーフのほうがつま先の痛みではるかにつらかった。でも足が動かない。必死に腰を立てて足を振り上げるのだが、前にいかない。走ってみなくてはわからない「足が動かない」状態を体験して、これがそうななんだと一人納得をした。不思議に笑顔がもれた。
氷雨受け 40キロを 走り抜け
ゲート見え 最後の2キロの 長いこと
初の体験を、かみしめながら楽しめた。
女性ランナーのゆれるポニーテールを見ながら、頭の中にプリンスの歌が巡った。
還暦を過ぎ、こんなことになるなんて、成り行きだからできたことで、目標にするなんて、考えてもみなかった。
だからこそ人生は面白くまた容赦もない。
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